犯人隠避教唆(はんにんいんぴきょうさ)とは

あなたの身代わりになり、自分が駐車違反をしたと名乗ってでたのなら友人は「犯人隠避罪」だけが成立します。その時、あなたは「道路交通法違反」と「犯人隠避教唆罪」になります。
道路交通法違反(駐車違反)は3カ月以下の懲役又は5万円以下の罰金で、両者は併合罪の関係になりますから、両罪で2年3カ月以下の懲役又は25万円以下の罰金となります。
友人があなたの名前をかたったなら「私文書偽造罪」と「犯人隠避罪」になります。
法定刑は「犯人隠避罪」は2年以下の懲役又は20万円以下の罰金。

松坂の場合は松坂が身代わりを頼んだのではなく、球団の人が身代わりを申し出たので、「犯人隠避幇助罪」であったと思われます。「教唆」と「幇助」では刑が違ってきます。刑罰を決めるのは裁判所ですが、裁判の前に検察庁から呼び出しがあり、検察庁で事情聴取し、検察官が起訴、不起訴の判断をします。もし、罰金で済むということでしたら、略式手続きということになると思います。検察庁に呼ばれた時に検察官からどういう刑になるか言われます。

犯人蔵匿罪と犯人隠避罪の違い(刑法103条)
犯人蔵匿とは、場所を提供して、官憲による犯人の発見逮捕を困難にする行為であり、犯人を自宅に匿う行為がその例となります。

犯人隠避とは、場所の提供以外の方法によって、官憲による犯人の発見逮捕を困難にする行為であり、犯人に逃走経路を教える行為や犯人に逃走資金を与える行為がその例となります。

いずれの罪も刑法第103条
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

Q疑問
刑法103条の教唆犯について質問です。
犯人自身が他人を唆して隠避行為をさせた場合、犯人隠避罪の教唆犯として処罰されるのでしょうか?
犯人自身が隠避行為を行うことは、期待可能性がないことから客体から除外されており、犯人自身は正犯として成立しないとされています。
そして、判例では、他人を唆して隠避行為を行うことは期待可能性がないとは言えない&防御権の濫用である、として、犯人自身を教唆犯として処罰しています。
しかし、共犯というものは正犯よりもより期待可能性のない間接的な犯罪行為であり、正犯を認めないのにも関わらず、共犯は認めると言うのはおかしいのではないでしょうか?

A回答
この論点は犯人隠避罪の保護法益(=国の刑事司法作用)のみならず、期待可能性の判断基準や共犯の処罰根拠をどう理解するかによります。

【期待可能性の判断基準】
X. 行為者標準説
行為者自身の適法行為可能性の有無を基準とする
Y. 平均人標準説
平均人なら適法行為の可能性があったか否かを基準とする
Z. 国家標準説
国家の側が個人に対しいかなる行為を期待するかを基準とする

【共犯の処罰根拠】
A. 責任共犯論
・共犯の処罰根拠は、正犯者を堕落させ罪責に陥れた事に求められる。
※極端従属性説に立つが、犯人自身による隠避教唆を期待不可能とする見解とはおよそ調和し難い

B. 不法共犯論
・共犯の処罰根拠は、正犯者に違法な実行行為を行わせた事に求められる。
・共犯の違法性は正犯行為のそれに完全に従属するので正犯行為が適法なら共犯も処罰されないし(「正犯なき共犯」を否定)、逆に正犯行為が違法なら共犯も刑法上違法となる(「共犯なき正犯」を否定)
※制限従属性説に立ちつつ、違法の連帯性を重視する立場

C. 混合惹起説
・共犯の処罰根拠は、共犯自身による法益侵害の惹起と正犯の違法性の双方に求められる。
・正犯の行為が適法な場合は共犯の成立が否定される(「正犯なき共犯」を否定)。
・違法な正犯に従属する共犯行為であっても、共犯行為自体に法益侵害の惹起が認められないときは共犯の成立が否定される(「共犯なき正犯」を肯定)。
※違法の相対性を認めるが、共犯従属性説は否定しない

D. 純粋惹起説
・共犯の処罰根拠は、専ら共犯自身が法益侵害を惹起した事に求められる
・正犯行為が適法な場合も、共犯行為自体に法益侵害の惹起が認められるなら共犯の成立が肯定される(「正犯なき共犯」を肯定)。
・「共犯なき正犯」もC説と同様に肯定される。
※違法の相対性を徹底する立場

B説に立つ場合、犯人唆隠避教の違法性は正犯自体が違法なら当然に認められるので専ら期待可能性の有無が問題となります、そして、X説を徹底すれば「犯人自身による隠避も他人による隠避の教唆も大して変わらない」として期待不可能とされるのに対し、Z説は「犯人自身が逃げるのは仕方がないが他人を犯罪者にする行為は国が個人に期待する行為を逸脱する」として期待可能性を認める結論を導き易いと言えます。
これに対しC説及びD説はいずれも共犯行為自体の法益侵害性を問うので、B説と異なり正犯の違法性は共犯のそれを必ずしも左右しません。「自己隠避は防御権の範囲内なので犯人隠避罪の保護法益を阻害しないが、他人を唆すのは防御権の濫用であり保護法益を阻害する」と考えれば、自己隠避は違法でないが犯人隠避教唆は違法であり可罰性が認められる事になるのです。そして防御権の濫用を重視する見地に立つなら期待可能性を否定する事も当然あり得ない訳ですが、これは期待可能性の判断基準に関するZ説の立場に即したものと言えます。逆に質問者さんのように「間接的な行為に過ぎない教唆を防御権の濫用と考えるのはおかしい」と考えれば、期待可能性の有無を問うまでもなく隠避教唆は自己隠避と同程度かそれ以下の法益侵害を惹起するに留まるため違法性が否定されます。そしてこの見解はZ説とは明らかに調和しないものです。
ちなみに私個人は、C説及びZ説に立脚したうえで判例を支持する立場です。


宅配大手「佐川急便」東京営業所(東京都江東区)の男性運転手が勤務中の駐車違反を隠すために知人を身代わりに警察署に出頭させたとされる事件で、同営業所の他の運転手十数人が同様の不正をしていた疑いがあることが、捜査関係者への取材で分かった。警視庁は、同営業所など数カ所を道交法違反や犯人隠避教唆容疑などで家宅捜索。身代わり出頭が横行していた可能性もあるとみて押収した資料を詳しく分析する。

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